「ごめんね。人が多くて前で見れなかった」





嘘だよ。




どんなに人が多くたって




私は君のこと、一番前で見たかった。




でも、あんな汚い気持ち




君には知られたくない




なのに





翔「嘘つき」






君には、見透かされているみたい。





「...」






翔「寂しくなっちゃった?」






優しい声に




静かに首を縦にふる。





翔 「そっか」





頭に触れる大きな手




一定のテンポで触れるその手が心地よい。






「嬉しかった、見つけてくれて。

今頃、女の子に誘われてるのかなぁ。って思ってたから

そしたらね、花火上がっちゃって、その度に歓声聞こえて

ああ、翔太くんも今頃、って思って、それで、それでね...っ」





溢れてくる感情、口がついていかなくて



もどかしい。



違う、もっと伝えたいことがある。




なのに






翔「もういいよ」






そう言って、私をギュッと包むから。





ああ、もしかしたら




彼は、言わなくても分かっているのかもって




暖かい君の体温が、それを証明してるけど




「翔太くん」




万が一、伝わってなかったら困るから





翔 「ん?」





声に出して伝えるよ






「...好き」





最後の花火が、パッと咲く






翔「知ってる、俺もだから」






花火の音にかき消される





そんな、ギリギリで聞こえた声のはずなのに






私にしっかり聞こえたのは





きっと、君の声だから。