高校二年の文化祭





体育館は、クラスTシャツや



制服を着た人たちで溢れてた。





「あっつー...」





私もその中のひとりで




あまりの暑さに



クラスTシャツを、肩までまくり上げるほど。





そんな中、聴こえてきたのは




優しくて甘い




君の歌声。






周りの女子の吐息が聞こえるほどのその歌は





体育館の人たちの視線を完璧に奪って







翔「ありがとうございました」






優しい笑顔で、しっかり頭を下げる君。





その姿がまた歓声と拍手を呼ぶ。




その8割が、女の子の黄色い歓声で




それに照れたように、君が微笑むから




次こそ、黄色い声に目眩がした。





分かるなぁ。




翔太くんの笑顔可愛いもんね。












なんて思いながら、なぜかモヤモヤしていた心





歌い終わった翔太くんの顔は堂々としてて




ああ、やっぱり彼は人の前に立つべき人なんだって





この学校では





私だけが知っていたはずの彼の歌声





今になっては、この体育館中の人がその歌声に惚れている。





「私だけじゃ、なくなっちゃった」





なんて、汚い心が




私のなかで渦巻いていて





だからかな



君の歌っている姿を目の前で堂々と見れなかったんだ。





みんなが君に釘付けになってる中





体育館の隅






輝く君を、君の姿を






ただ一人、遠くから見つめてた。