「は、道まちがえるとかありえねえ。」

「ごめんって!本当に…」

まあまあ、と波音がすぐ間に入って場を取り持つ。

「ひなつも間違えるんだ、真面目そーなのに。」


林檎の声に小さく肩が震えるひなつ。それを察した託。だが何も言わない。代わりに波音が嬉しそうに、
「津田、真面目だって。褒められてる。」

「別に褒めてないだろ。」


託の救済もむなしく、

「バッカみたい。歌純、行こ。」


「うん。リンちゃん、正しい道はねー…」


女子グループ2名が先頭を切って、行ってしまった。

正しい道は、何も私が調べなくても確かめることはできたらしい。私は無駄なことしちゃったのかな…。


「津田、行こ、早く。」

「…うん。」


子供みたいな波音の、軽い足取りに比べなくても、ひなつの靴は引きずって歩いているため、音が目立つ。

最後尾を歩く託にでさえ、

「無駄な足音立てると忍者失格だぞ。」


意味のわからないダメ出しを食らう始末。

なんだよ、どうせ私は無駄なのかよ。ケッ…。

やさぐれた心にある癒し、それは、



「大島くーん、にっこり笑顔でハイチーズ!」

「にっ。」


そう、大島 波音くんの笑顔はとっても可愛い。
もう天使ってぐらい。だから私、大島くんは泣かせないぞ、と心に決めているんだ。何があっても守る、なんて男側が言うセリフっぽいけど、私は結構本気です。大島くんが…好きなのです。私。






「罰ゲーム、腹踊りねー。」

「えー?女子には、きつーい。」

「じゃ、私と歌純パスで、三人じゃんけん。」


どうしよう。林檎ちゃんの悪ノリがひどい。


私、デブだし、腹踊りで自信と信頼を失いそう。

ひなつは、出す手がとてつもなく震えている。

波音が心配そうに、大丈夫?と聞くが大丈夫ではない。緊急事態だ。ひなつは、まるで空へ飛んで行くように命が終わる日、が今日だとは知らなかった。今日大安なのに…。大安吉日説は、なんだったの…?夢…?


「津田、俺、手握るとできものが痛いからグーなしでいい?何も痛くないのはパーだからさ。」


「あ、うん。ニキビ?お大事に。…それなら、私もさっきころんで擦りむいたの痛いし、グーなしにしよ。ありがと、氷山くん。」


氷山くんのおかげで少し緊張がほぐれた。よし、最悪、腹踊りの写真さえ取られなければ不幸中の幸いだよね。ひなつは、覚悟を決める。よし、大丈夫だ。