チャンネル争いの仕返しよろしく立て続けに質問を繰り広げるヒロヤ。

……面倒臭い。答えることが億劫になった私は、奴と視線を合わせなくてもすむように背を向けてやるものの。



「じゃあ襲われてる女がわんさか居たらどうすんだよ。そいつら全員助けるなんて無謀だろ?」

「ヒロヤうっせぇ……、寝らんねぇから静かにしろよ」

「俺なら無理だって見切り付けるけどな。それで助けられなかった側から恨み買うなんてゴメンだし」

「………」

「つーか寝るのかよ。じゃあリモコン寄越せや!」





鬼の形相でリモコンを再度奪取しようと身を乗り出したヒロヤを見て、妙に納得した。

リモコンの件もそうだけれど。だって私また寝ようとしてるし。

それに対しても勿論頷いた訳だけれど、「例えば」の話で女の子のことを引き合いに出した奴はやはり男だと再認識した。

其処らの認識が女の私とはまるで違う。


"見切りを付ける"なんて、それを目の当たりにする前に決め付けることはできない。

少しでも傷が浅いものですむように、私自身のやり方で善処するまで。







「ちょっと出てくる」

「はァ?寝るんじゃねぇのかよ」

「何かあったら電話しろ」

「あ、は、はいッ!行ってらっしゃいませっ」

「おいユウキさーん、シカトかよオーイ」





椅子の背に掛けてあった上着を羽織り、入口付近で待機していた奴に声を掛けて。

背後から聞こえるヒロヤの声と、そんな奴を小馬鹿にして笑い声を上げる幹部たちの声音。



全てからすり抜けるようにして出た倉庫の外は、予報通りの雨模様だった。