これは、今や恋人となった二人が未だ「相棒」として互いに背中を預けているときの物語である。



* * *




麗らかな春の日和。外では和やかな雰囲気を匂わせるように鳥が唄を奏でる中、住宅街から離れた場所にひっそりと佇む倉庫が在った。

物騒な騒音を界隈に轟かせる彼らも、活動時間ではない日中は大人しくしていた訳で。



最早見た目は廃墟と化しているその場所の扉を掻い潜り、堂々と構える鉄製の階段をのぼっていくと、視界を明瞭に遮る大きな扉が存在する。

そこは所謂「幹部部屋」なのだが。





『………このように、"鶴の恩返し"は様々な形で私たちのもとに伝承されているのです。それは一般に「何か良いことをすると必ず別の良いことが自分にかえってくるよ」という教訓を交えた話であると考えられがちです。しかし実際は、動物を助ける優しさを持ちながらもたった1つの約束(「決してのぞいてはいけない」という約束)さえ守れない愚かさを合わせ持った人間の、複雑な心理を表しているという説もあります』

「……おい」

『「鶴の恩返し」は助けた鶴がその恩を返すためにやってくるという話です。新潟や山形などの北国が発祥と考えられていますが、全国に似たような話が点在しているようです。……』

「聞いてんのか、ユウキ」

「……聞いてる」

「これどうせ見てねぇんだろ?変えるぞ」

「見てる」





参考:日本文化いろは事典様(http://iroha-japan.net/)
※掲載許可申請済