しかしながら、その瞬間に奴の瞳に走った動揺を私が見逃す筈もなく。
適当にしらばっくれるヒロヤ相手に痺れを切らし、苛立ちを滲ませて問い詰めていけば。
「あー……、殴らねぇ?」
「その台詞言うときって本当ろくでもないよね」
「………」
「殴らないから。約束するから」
だから言え、と。閻魔大王もビックリの形相でその先を促す私に対し、早々に白旗を掲げたヒロヤは言葉を後続させる。
「ヤってるときさ」
「………うん」
「ゴムしてたんだけどさ」
「うん」
それは知ってる。だから私も可笑しいとは思っていたんだ。
でも、本当に言いたいことはその後の台詞らしくて。首を傾げながら続きを待っていれば、何故か照れたようにはにかんだヒロヤは破顔一笑して一言。
「ユウキとヤってんのに興奮しすぎて、なんつーか……何回か抜くの忘れた?みたいな?」
「は?」
「だから慌ててナカから引っ張り上げたんだよ。何回か」
「……意味が……」
「だから、暫く抜かないでいればゴム外れんだよ。ナカで」
「………」
「そんときはヤッベェって焦ったけど、考えてみりゃ俺ら婚約しちゃってるし?」
「………」
「別に避妊できてなくても良くねぇ?とか思って」
「………」
「ここ最近ではゴムもしてなかッ、―――…ってぇ!!殴らねぇっつただろ!!」
「限度ってモンがあるだろ?なぁ?そういうのデキ婚って言うんだよ!!」
「ユウキさん口調、」
「今は無理だ。抑えがきかねぇ」
「いやほら、でもあれだろ?生まれる前に籍入れればオッケーじゃね?」
「全ッ然オッケーじゃねぇよ!?お前実はすっげぇバカだろ!!」
「だから頭は良いほうだって、」
「もうそれ聞いたから。今そんなこと言ってる場合じゃないから」