やっぱり気になるものは、気になる。

病院をあとにしてヒロヤの運転する車に乗り込んだ私は、隣でハンドルの握る男の耳朶を尚も装飾するそれについて言及するべく口を開いた。



「ヒロヤ」

「? なんだよ」

「そのピアスなんだけど……」




眉根を寄せて思案し、首を傾げつつ言葉をおとす私を一瞥した男は再度前へと向き直る。

見れば赤だった筈の信号は既に色を変えており、レバーをドライブに移動させた男は閉じきっていた口を薄く開いて、そして。



「………気すんなって言っただろ」

「んなことは言われてない。有耶無耶にはされたけど」

「そうだっけ?」

「そうだけど」

「あー…、そう言えば今日って」

「話。逸らそうとするな」






ジトっと視線を向ける私と、まるでその話題を避けるように言葉をおとすヒロヤ。

気のせいじゃなければ、さっきから私の目すら見ようともしない。なんだコイツ、ますます怪しい。

しかしながら、そんな怪訝さ剥き出しの心情は次の言葉によって萎んでしまうことになる。






「つか、お前。覚えてねぇの?」





流し目まじりに言葉をおとしたヒロヤに促されるように思案に暮れるものの、やはりヒットする記憶がまるでない。

ここ最近思っていたけれど、私って記憶力なさすぎじゃない?