私がこの病院にお世話になってから、あっという間に月日が流れていった気がする。

気付けば今日は、退院の日。



「寂しくなるわねぇ」



看護師さんにそんな言葉を向けてもらえるくらい。そんな彼女に苦笑まじりの笑みで「お世話になりました」と向けると、「香弥ちゃんのカレ、カッコいいんだもん」と返されるに至る。

なんだよ……そっちかよ。



忘れ物が無いかどうかチェックする傍ら、ふと振動し始めたスマホを取り出してみると。





【今から行く。あ、今日から俺ら同棲だから】







「………は?」

「香弥ちゃんなに!?ちょっと、恐いじゃない!女の子なんだから!」

「え、あ……ごめんなさい」





最後の片づけを手伝ってくれていた彼女の耳にも唖然とする私の言葉が届いたらしく、性別を武器に窘められる始末で。

しかしながら尚も眼下に広がる文字の羅列は、抗いようもない事実。



どうやら、入院していたせいで情報処理能力が著しく低下しているらしい。

打ち間違いの可能性を視野に入れ、私は未だに慣れないスマホでアプリを起動させる。







【今から行く。あ、今日から俺ら同棲だから】

               13:20【は?】




今やコミュニケーションツールとして主流となったそのアプリ内で、ヒロヤの吹き出しの下にコメントを打ち込む。

右側・緑色の吹き出しには、私の心情そのものがハッキリと表示された。