「いやさ、嫌な予感がすんだよ……」

「 嫌 な 予 感 と は 」

「わ、わかんねーけど!ヒロヤとかヒロヤとかヒロヤとか、とにかく不平分子の匂いがやべーんだわ」



そう言葉にしながらキョロキョロと辺りを見渡し続ける昴くんのほうが、余っ程不審者に値すると思うのは私だけだろうか。

ていうか、それってつまりヒロヤさんに対して怯えてるだけじゃないですか。頑張れよ先輩。






「………なんでそんなに警戒するんですか、ヒロヤさんちゃんと昴くんのこと敬って―――」

「シャラーップ!」

「はぁん?」

「ヒイ、り、稜ちゃん…!?」




最近特に酷い気がする。この、昴くんのヘタレ具合。

取り敢えず先ほど同様にうるうると視線で訴えてくる彼の要求に乗ったら駄目だ、甘やかしたら駄目だ。







そんなやり取りをしている内に、病院に併設された駐車場には直ぐに辿りついてしまう訳で。

率先してバッとキーを取り出した昴くんは瞬時に扉を開けて運転席に座りこむ。その俊敏な動きはさながらハンターのようだった。




「で、」




しかしながら、そんな彼の行動なんて知らないよと言わんばかりにゆったりと助手席に乗り込んだ私は言葉の先を促すのだ。

あくまでマイペース。終始昴くんに感化されて生活していたら、きっと恐ろしいことになってしまう。私だけは正常で居ないと。