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「ちょっと、待ってくださいよ昴くん!」



自動ドアを潜り抜けるなりふらりふらりと駐車場に向かう彼にギョッと目を見開くと、そう声を張り上げた私はむんずとその腕先を掴みあげた。

ぎりぎりと込める力に比例して、泣きそうな顔でこちらを見下ろす昴くん。





「なんでそんなに急ぐんですか!なんか……怪しい」

「稜ちゃん痛い、痛いヨ」

「なんか隠してません?なーんかおかしいですよね、ユウキさんの病室出てから」





挙動不審に視線を彷徨わせる昴くんを吊り上げた眉尻もそのままに睨め上げていれば、「ちが、ちがうから」と述べた彼は尚もカニ歩きで駐車場へと急ぐ。

なにをそんなに慌てているのか、私には皆目見当も付かないワケで。









「――――言わなかったら実家に帰ります、私」

「え!?実家ってマジの実家!?」

「それ以外になにがあるんですか!もーホント意味わかんない昴くんっ」





ぎゃいぎゃいと言葉を重ねていく私を更に泣きそうな表情で見下ろす彼に、ガックリ。

そんな顔をしたいのは寧ろ私のほうじゃないだろうか。


纏わり付いてくる腕をほどくようにブンブンと振り回す傍ら、そんなことを考えてしまうのも自然だと思うのだけれど。