―――――――――――…



鼻腔を掠める薬品の香り。

ぼやけた視界に映り込む、白い天井。



開け放たれた窓からはカーテンが往復を繰り返し、その柔な光景に暫し視線の先をとどめた。




「―――……、あれ」




ズキッと痛む頭を隻手で覆う。

柔に差し込んでくる太陽。どうやら日中らしい。






―――――と、


「…………」




ふと落とした視線が捉えた、黒い頭髪。

以前ハデに染められていた筈なのに痛みとは無縁だと感じてしまうほど、柔な毛先に指を絡ませる。




ベッドに突っ伏すようにして、囲った腕に顔を埋めている男。

シンプルに耳朶を彩るひとつだけのピアスが、その黒髪の間から見え隠れしていて。





自然と上がってしまった口角を自覚する間もないまま、その光景をじっと見つめていた。

そう言えば、こんなにまじまじと目にするのは初めてかもしれない。



もどかしさに抗うように、黒髪を払ってそのアクセサリーを凝視してみる。

すると。



「…………あれ……?」