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早朝、閑散とした住宅街付近の一般道。

久しぶりに会った連中に半ば連れ込まれるようにして入った居酒屋をあとにして、数十分。

火照った頬に丁度いい具合に冷えた風が、速度に比例して向かってくる。


よく知った道だった。

滅多に検問がないことも分かってたし、ましてや早朝なんて人通りも皆無に等しいことも知っていた。






その油断が、アダとなった。


―――――キキィッ





なにが起こったのか。自分でもよく分からなくて。

とにかく違和感を覚えた。

感覚に任せるようにブレーキを踏み込んだ。

ようやくタイヤが止まったことを悟ってバイクから降りた俺は、愕然とした。








『…………は………、』








信じられなかった。

信じたくなかった。


これをやった張本人が自分だって、信じたく、なかった。







『――――……宏、也……?』








しかもそいつは、よく知った顔の男で。

高校で初めて出来た友人だった。

成人してからも、よく一緒に飲みに行ったりした男だった。




そうか、ああ、なんだ、どういうことだ。




俺は今、"俺"のカオじゃなくなっているのか。