ただ、何も言わず。

闇雲に向かってくる人間に拳を捻じ込ませ、崩れ落ちる彼らを目に映すこともせずに歩を進めていく。







「―――………、」


この先に何があるのかなんて分からない。







でも、私はこうするしか無かったから。

バチバチと街灯に群がる害虫たちと同じように、夜になっても眠ることの無い街で喧嘩に明け暮れる。







この日も相当な数の男たちを相手にした。

けれど私にとってそいつ等の数なんて何の意味も成さなくて、ただ思うことは一つだけ。











――――あの家に帰らなくて済むなら、喧嘩でも何でも買ってやる。











「アイツだ!!」

「なんだよ、まだガキじゃねぇか」




又もや数人の男によって塞がれた道。

フードが滑り落ちないように今一度強く引っ張り、段々と集まり始める人間を感情の籠らない瞳で静観していた。











「よォ兄ちゃん、昨日はよくも可愛がってくれたな」