「そうだろ?――――藤堂亘《とうどうわたる》くん」




それは予測した通りニセモノ男のところでピタリと止まって。

男の名前らしきそれをヒロヤの親父さんが口にした瞬間、ビクリと大仰なまでにニセモノ男の肩が上下したことを認める。


その表情は動揺に塗れすぎていて、正常とは呼べないまでに歪められている気がした。






ニセモノ男からの返答は最初から望んでいなかったらしいヒロヤの親父さんは、ふうと軽く息を吐き出してから台詞の続きを口にする。


「実はな、」



カツン、と。高級のそれと判る革靴に包まれた足を一歩踏み出すと。

斜め後ろに控える私の父に軽く目配せして頷いたヒロヤの親父さんは、私以上にヒロヤにとって衝撃的な一言を吐き出したのだ。









「昭人の証言のままだと、宏也。お前に容疑の目が向けられていたかもしれないんだよ」








嫌な言葉というものは、どうしてこうもハッキリと耳朶に入り込んでくるのだろう。

ぐるぐると回る思考はまとまりきらず、収拾がつかなくて。

息を詰めたまま視線を浮上させてヒロヤに向けてみる。


するとそこには、



「―――………は……?……んで、」






限界まで瞳を見開き、息を呑みこんで自らの父親を見つめる男の姿があった。