警戒心むき出しで父を睨む私。

そんな私を唇を引き結んで見つめるヒロヤ。と、その親父さん。



暫くは沈黙がこの空間を支配した。

しかしながらそんな時間も束の間で、徐に口を開いたヒロヤの親父さんによって再度視線が集められることになる。





「先ほども言った通り、彼があの事件の目撃者なんだ。そうだよな、昭人」

「……ああ」

「しかし彼の目撃情報には曖昧な点が含まれていた。だから、伏せてもらっていた」








状況が緊迫しているだけに、親密そうに言葉を交わす社長ふたりの間柄に疑問が生じる前に、別のところに疑念がわく。

とりあえず、今までのヒロヤとニセモノ男の応酬を見て大体の現状は呑みこむことができた。

「サトル」がヒロヤの兄貴を指すということ。

そしてその「サトル」を殺した犯人が、この場に居るニセモノ男だったんじゃないかってこと。



更に付け加えるならば、ヒロヤの親父さんいわく私の父がその事故の目撃者だったということ。









「その情報は当時は確かに曖昧だった。しかし、今では明確なものとなった」








一気にそう告げたヒロヤの親父さんは、順繰りに視線を違えていくと―――ある人物のところで、ピタリとその動きを封じ込める。