「彼が、あの事故の目撃者なんだ。俺が外部に漏らさないように頼みこんでいた、結城昭人さんだ」



ヒロヤの親父さんがそう言葉にしてから、しんと静まり返ったこの場所に居る人間は5人となった。

ヒロヤに私、それとニセモノ男。加えてヒロヤの親父さんが登場し、次いでその背後からは―――







「また会ったね。宏也くん」



やけに笑み孕んだ声音でそう言葉を口にしてみせた、私の父親その人が姿を現したのだった。






それにしてもそんな表情、初めて見たかもしれない。

思わずそう疑ってしまうくらいにこやかに相好を崩した父は少し距離を隔てたところに居るヒロヤにそう告げると、すぐに視線の矛先を私へと移す。



「…………」

「…………」







その瞬間に先ほどまでの笑みはすっかり影を潜め、まるで何も見なかったように視線を外したのだ。

別に、そうなるって分かってた。だから今更私が傷付くなんてことはない。

始めからシワを刻んでいた眉根は更に中央へと寄り、父に対する懸念はいつも通り膨れ上がる。



ヒロヤを騙すつもりなのかもしれない。私が、気を付けないと。




「(それにしても、)」


また会ったね、とはどういうことなのか。

もしかすると既にコンタクトを終えた後なのだろうか。本当、油断も隙もない。