それらを踏まえた上で俺が取ることのできる行動は二つしかない。
この部屋に留まるか、この場所から逃げるか。
先刻述べたとおり、逃げるつもりは更々ないワケで。そうなると、自ずと道はひとつに絞られることになる。
『………待つっつってもなぁ、』
ポケットに忍ばせておいた煙草ももう既に底を突いた。
その証拠とも取れる灰皿には既に清掃の手が行き届いており、数時間前まで残されていた吸い殻は姿を消してしまっている。
こうして足を組みかえるのも何度目だろうか。数えることもしなかった。
こうして何もすることがない空間にひとりで居ると、知らずの内に脳裏を埋めるのは彼女のことで。
ユウキは今、なにをしているだろうか。
昴さんと稜さんの家で大人しくしてくれていれば、良いんだけどな。
そういうタマじゃねぇからなぁ、アイツも。
無意識の内に"ムッ"と頬を膨らませる彼女を思い起こす。その瞬間に緩んでしまう頬を自覚する暇もなく、
『――――小宮山くん。入ってもいいか』
二度のノックののちに鼓膜を痺れさせた、今まで聞いたことのない低音の声音に目を見開いた。