――――俺がユウキの連れ込まれたビルまで辿りつけたのには、ある理由がある。

それは数日前の、あの日。結城興業によって催された大規模なパーティにまで遡ることになる。








* * *



『…………さて、と』



どうすっかな。

ユウキのことを昴さんに託してから。直ぐ背後にまで差し迫っていた黒服にガッチリと捕らわれた俺は、どこかのホテルらしき一室に放り込まれた訳なのだけれど。




まあ、逃げる気なんか更々なかったからな。

目的はただ一つ――――結城社長への直談判。それを達成するためにはまず、何がなんでも相手の懐に入り込まなければならない。だから抵抗はしなかった。



それで連れて来られた場所がこの、ネズミをぶち込むにしちゃ豪華すぎる部屋だったワケで。

窓から覗く景色はまさに高層マンションの上階そのもの。

ランドリーやキッチンが完備されている上に、部屋は広々と二部屋。スイートと考えるのが妥当だろう。









『(それに、)』




驚くべきことに、鍵はかけられておらず。逃げようと思えば、今すぐにでも逃げられる。

しかしながら俺はそれをしようとも思わない。相手もきっと、そんな此方の心情を知った上でこんな真似をした。






諸々の待遇から考えてみても、俺の身元は既に割れたものとみてまず間違いない。