胸中を渦巻く感情は決して安いものなんかじゃ無かった。言おうと思えば口にできた。

けれど、それさえも凌駕しちまうほどに強い情を込められた瞳で見下ろされたら。

反論なんて、したところで説き伏せられる自信なんてなくなっちまったんだ。




「………親父は、いいのかよ……」





代わりにポロリと落ちてきたのは、情けなくも弱々しいそんな台詞だけで。

小さく音にしたその言葉は、若干の震えを含んでいて詰まった息を吐き出した。

情けねぇ。情けなさ過ぎて自らを嘲った。








「………」

「………」

「……、宏也」




沈黙を経由して鼓膜を揺らした低音に、顔を上げる。

長身の親父の顔は、よく見上げられる立場にある俺よりも更に上の位置にあって。




見上げた先に映る親父は、少しだけ困ったように薄く微笑むと。







「………実はな、お前に言ってなかったことがあるんだ」

「、」

「智が死んだ事故。あの日、目撃者もなく犯人は逃亡して行方がわからないと告げたと思うが」










「―――――本当は、いたんだ。目撃者」






驚きに、目を見開いた。