悔しい。悔しい悔しい悔しい悔しい、悔しい……!

今すぐ掴み上げるこの手を取っ払って、この男を思い切り殴り倒したいのに。

叱咤するように自らの脚をバシバシ叩いても、腕を隻手で抓ってみても。






「………」



どうやら本気で限界を超えてしまったらしく、思う通りに動いてくれない自分の身体が恨めしい。

ずっと噛み締めていた唇からは血が滲み、余りの悔しさに涙が膜を張ってふくれあがる。

こんな奴の前で泣いてたまるか。引っ込め、バカ。それこそコイツの思惑通りになっちまう。




そんな私の様子を、この男は至極愉快そうに見下ろしていた。







「どうせ死ぬなら、オトコ相手にしてからでも遅くねぇよな?」








その意味が分からないほど馬鹿じゃない。

気配で男が屈み始めたことを知る。だけれど、顔を上げるなんてことは出来る筈もなくて。



数年前に裏のセカイに足を突っ込んでから、初めて。

女の子が無理矢理そういう行為に巻き込まれていることを知った。

助けられた子も居れば、助けられなかった子も居る。





「せいぜい、愉しませろよ」








嗚呼、これって、もしかして。その子たちを助けられなかった私に対する、遅い罰なのかもしれない――――