薄暗い場所。気を抜けば相手の出方さえも窺えなくなってしまうくらい。
そんな寒々しい殺風景な場所で、私は目の前でこちらを見下ろす男を微動だにせず睨め上げていた。
「―――死ぬ覚悟はできたか?」
「てめぇがな」
「減らず口も甚だしいな。………言ったじゃねぇか」
そこでニヤリ、と。背筋に冷や汗が伝うくらい不気味な笑みをその顔面に貼り付けた男は、狂気を隠すことなく口角を持ち上げると。
「『いっそ殺してくれって言いたくなるくらい』………死なれちゃ困るから手当てしてやったんだぜ?お・れ・が」
「………ッ、」
「爆風をもろに浴びた感想はどうだ?痛いか?痛いよなぁ、ガラスが刺さってんだもんなぁ」
「……寄るな」
「強がるんじゃねぇよ、所詮てめぇなんざ」
ガッ、と。強く髪を引っ張られる。
信じられないくらいの激痛。思わず顔を歪めて歯を食いしばる。
――――このときの私は、無念さを堪えることに必死で
「どうやったって男にゃ勝てねぇ、無力なオンナ風情でしかねぇんだからよ」
どうして被っていた筈のウィッグが無くなっていたのか、気付かずに居たんだ――――