* * *



遠くない過去に経験したばかりの感覚だった。

渦巻く暗闇に引っ張られて、呑みこまれる。ふと気付いたときには既に全身が鉛のように重くなっていて、次の瞬間には全身を傷が一斉に刺し始める。


薄らと瞼を持ち上げながら、コホッと詰まりきった息を吐き出した。




「――――………、」







此処は、どこだろう。薄暗い場所。

ぼやける視界に映るのはコンクリートの壁ばかり。

段々と覚醒していく脳を、頭を抱えるようにして身を起こしてみる。



――――と、






「どうだ?目が覚めたか、総長サン」

「―――………ッ、!」

「んな警戒すんなよ。傷付くねぇ」






見上げた先にあったのはニセモノの男の顔だったから。驚き一色に顔を染めた私は目を見開き、次の瞬間には眉間にシワを寄せていく。

あれ、なんかさっき―――意識を失う直前に。

ヒロヤに、本物のヒロヤに会った気がするのだけれど。それは気の所為だったのだろうか。





余りにこの現実から目を逸らしたくて、まさかこの男と見間違ってしまったのだろうか。

もしそうなら、私は私を心底蔑視する―――。