* * *




自らの腕の中で意識を手放した香弥を一瞥した宏也は、暫く無表情で彼女の身体を見つめていた。

至る所にある血痕。それは彼女自身の傷に他ならなくて、それらの上から乱雑に巻かれたタイツはもう既にほどけ始めていて。



二人の近くに積み上げられた男たちは、気絶しているのかピクリとも動かない。

裸足で逃げていたらしい香弥の足の裏は赤く爛れ、血が滲んでいる。





ずれた彼女のウィッグを取り払えば、いつも目にしていた自然なブラウンの長い髪がパサリと流れおちる。

沈痛な面持ちで香弥の頬を包む宏也。

その表情は、稀に見るほど苦渋に満ちていて。



眉間にこれ以上ないくらいシワを刻んだ男の唇は微かに震え、その胸中に燻ぶる感情の高ぶりを露骨に示していた。










――――と、そのとき




「ハジメマシテ………ではねぇな、うん。久しぶりじゃねぇか、副ソウチョーさん」

「………あ?」










頭上からおとされた言葉に、徐に顔を持ち上げる宏也。

見上げた先に映る顔面に驚き、息を詰まらせる。

そんな宏也の様子を優越感の滲む面構えで見下ろした男は、酷く似通った顔立ちを極限まで歪めて言葉をおとした。




「さぁ、愉しいゲームを始めようか」