「久しぶりじゃねぇか、総長サン」

「―――……てめぇは誰だ」

「よく出来てるだろ?コレ」



そう言いつつも奴が指し示したのは、その顔面だった。そんな男を睨め付けながらも、パンプスを持つ手にはじわりと汗が滲んでいく。

絶対に、動揺を見せたら駄目だ。目の前のこいつに付け入る隙を与えたら駄目だ。








「てめぇにツラ潰されてからな、俺ぁずーっと考えてたんだよ」









ゆらりゆらり、と。覚束ない足取りでこちらへと向かってくる男。錯覚しそうになる。その口からおとされる声音はヒロヤのものとは全く異なるのに、――――……カオが余りに似ているから。




「………ツラ?」

「そういうふうにテメェ自身が覚えてねぇことも想定内だ。俺はあの日からな、ずーっとテメェが苦しむ方法だけを考えて生きてきたんだよ」

「……、…どういうことだ」






スキニーに包まれた脚が小刻みに震えそうになるのを、思い切り押さえ込んだ。この男の眼はヤバい。その内に渦巻く狂気がその発言の重みを、これ以上ないくらいに裏付けしていた。

正直、恨みは買いすぎていて心当たりがまるでない。でも、最初からこんなにもヒロヤと瓜二つだったのなら深いところで覚えていそうなものだけれど―――








「てめぇの男と同じカオで近付けば、てめぇにゃ隙ができる。従って俺のほうが有利になる。そいつと同じカオした男に殺される気分は、どんなモンなんだろうなぁ?」






―――こいつの場合、最初からその顔立ちだった訳ではないらしいから。