取り留めのない会話を交わしてから、何気なく隣のユウキを飛び越して視線を後方へと伸ばした。

すでに足を進め始めたあいつは気付かない。

でもそれが、逆に良かったとさえ思ってしまう。





原形をとどめていないツラ。

ぼろぼろに崩れたそれは一般的にみれば同情に値するものだろうな。でも俺は、ちがう。



今し方ユウキにやられたそいつはジっと俺らを睨めつける。

流血した額を押さえるように隻手で覆い、そのままただジっと。





赤く染まる表情の中でそいつが眉尻を吊り上げて、眉間に深くシワを刻んでいることは容易に想像が付いた。

でも俺の動揺を誘った一番の要因は、



『絶対……、ゆる、さねぇ』











―――深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く



奥底から吐き出されたその呟きは、距離を隔てている筈なのに執拗に俺の耳朶を追ってきた。

思わず目を見開いてそいつに視線を、とばす。



このとき感じた厭な予感はいずれ、ユウキと俺をじわじわとどこまでも追行し、奈落へと突き落とすことになる――――。