―稜side―



焦りが心拍数の速度と比例し、どんどん募っていく。



「何ですかあなたたちは!!」

「………」

「(薄気味悪ッ…!)」





どんどんと伸ばされる腕は私の四肢を狙っていて。動きを封じようとするそれらを蹴り飛ばしながら視線を最奥に伸ばす。

徐々に背中が小さくなっていくユウキさん。

彼女はまるで催眠術にでもかかってしまったかのように、視線は一点から逸らされることはなくて。






「―――ああ、もうっ」




次から次へと伸ばされる黒スーツの厳つい腕。

個々の力量は取り立てて言うほどのものではないにしろ、数が多過ぎてどうにも逃れられない。









途中までは屈んだり足を払ったりして応戦していた私だけれど、一度片腕を捕らわれてしまっては思うように動けなくて。

無駄に太い腕から逃れ、ヒールに包まれた脚で蹴りを繰り出す内に。



ちらりと視線を彼女へと戻したときには、もう―――

ユウキさんの姿は、無かった。