「俺、ヒロヤのことを巻き込んでしまったんです」

「………」

「アイツは何にも悪くない。稜さんも昴さんから聞いてますよね?"結城"はもう狂ってる。そんなところにヒロヤ一人を置いてくるなんて、あの頃の俺はマジでどうかしてました」

「……、…ユウキさん」

「はい」

「あのですね、」



その瞬間。


―――ピタッ





「つ、冷た……!」






思わず声を張り上げてしまった自らの口を慌てて押さえ込む。

そんな私を中腰の姿勢で見下ろす稜さんは、満足そうに笑みをその口許に浮かべると。





「スッキリしたでしょう?」

「………、びっくりしました」

「あはは、ですよね。ごめんなさい。でもですね、」




中途半端に言葉を句切った稜さんを言葉無く見上げた。

その華奢な隻手に握られるのは冷え切ったペットボトル。

彼女は此方の様子を視線で捉えて薄く微笑むと、ゆっくりとその先を紡ぎ出す。









「ユウキさん、ここに来てからずっとそう言ってますよ。余り自分を責めたら駄目です。だってそれで解決することは何ひとつ無いでしょう」

「………」

「複雑な心境であることは察します。でも、それはユウキさんがヒロヤさんにそうさせたんじゃない。ヒロヤさん自らが残ると言ったなら、彼にだって何かしらの考えがあると思います」



最後の言葉を述べるとき、普段以上に語気を強めてそう告げた彼女にそっと視線を持ち上げる。










「待っていてあげてください。それが、今のユウキさんに出来ることじゃないでしょうか」

「………、…はい」