例のパーティーからほぼ一年の歳月が経過した。

目前に迫り来るのは四年間通った大学を卒業する日。

それは即ち、これまで懇意にしてきた友人らとの別れを意味する。



分かっていた筈のことだ。

要は私が、私の中のココロが駄々を捏ねているだけのこと。






「香弥ちゃん、そろそろ準備しないと――」

「わかってるから」

「そ、そうよね……、ごめんなさい」









中々部屋から出ない私を不思議に思ったのか、顔を出したのは言わずもがな母親で。

そんな彼女に日頃よりもきつい物言いをしてしまったのは私にも余裕が無いからで。



「――――ううん、私こそごめん」







俯き気味に謝罪の言葉をぽつり、と。

力無く吐き出した私を見た彼女は眉尻を下げていたけれど、その思案した言葉が結局音になることは無くて。









しんと静まり返った空間は厭な雰囲気を孕んでいた。

けれど、その空気に関して私たちが何かしらの言葉を口にすることは無く。



臆病で、過敏だったから。

お互いを傷つけまいとする余り、詰まるところ何を口にしたら良いのか分からなかったんだ。