何も変わらない朝を迎えた。

今日これから確実に起こるコトがまるで嘘かのように、清々しささえ感じることの出来る空気を肺の奥まで押し込める。



「(――――……嫌、だな)」








心の中でなら何を思っても誰に咎められることも無い。

私が表面的に大人しい令嬢を演じさえすれば、万事コトが上手くいく。



ずっと前から決められていたことだ。

揺るぎようが無い決定事項。最早私一人の心が付いていかないからと言って、覆るなんて有り得ない。









薄らと肌を刺す朝独特の空気に、いまは触れていたくて。

次第に現実を映そうとする瞳を無理やり閉じた。

足掻きだと知っている。だからこそ、ぎりぎりまで。



「(――……、………)」







淡色のシーツに散らばる自らの髪を、そっと視界に映してみる。

決して明るくはない栗色。人工的な照明の無いこの部屋ではますます暗く見えて、細く息を吐き出した。








普段よりも暗く見て取れる髪色が指し示す未来が、それにそぐうものになる気がして。