長い長い眠りから覚めたような心地だった。
ずっと私の脳を、身体を、全てを蝕んできた悪夢から解き放たれたような。
『ふーん、お前ユウキっつーの?』
『…………』
『無口なヤツー。つまんねぇ』
そんな身も蓋も無い台詞を直接ぶつけてくる男に眉根を寄せて睨み付けた。
無言の圧力。こうして眼力込めて牽制すれば、大抵の奴は逃げていったから。
それは今までの、取るに足らない経験から学んだモノだった。
だけれど、
『――――あのな、』
ぴょん、と。
未だ成長過程にあるであろう其の背丈にはそぐわない大型のバイクから飛び降りた男は、やれやれと言いたげな面持ちで私の顔を覗き込む。
『そんなの俺には効かねーの。なにお前、アホなんじゃねぇの?』
なにコイツ、失礼にも程が有る。
第一印象はそんなもんだった。
数年後に再会するときよりも明らかに派手だった髪は、誰の目から見ても金髪かそれ以上。
それ以上って何だよ、って話だけれど。
兎にも角にも脱色し過ぎて意味不明になるくらいには、日本人の髪色から離れ過ぎていたのだ。