――――――――――――…




「はあ……」


膝を抱えて吐き出した溜め息。

だけれど決して大きくは無いその音は眼前で寄せる波に吸い込まれてしまった。







サテン調の生地でつくられた薄いワンピースが視界の端で揺れていた。

濃紺。なんでこんなの、着ちゃったんだろうか。



―――深く吸い込まれそうな色合いのそれを見ていると、沈んだ感情が何処までも増幅されていくようで。










誰も居ない海岸。

寒々とした風に掬われた髪がずっと遠くに伸ばされていく。

似合いもしない巻き髪。似合いもしない、この服装。




「(………、…)」







でもヒロヤは、正直似合ってた。

生まれ育った環境まで似たものだったなんて、予想している筈も無くて。




過剰に感じる周りからの期待。

幼い時間を全て掌握されたことによる精神的な苦痛。








――――彼も私と、同じだったのだろうか