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「結城様ですね。お待ちしておりました」

「御招待いただき有難うございます。本日は、どうか宜しくお願いします」






受付に座る綺麗に着飾った女性にも一切の隙のない笑みを向けた。

この人とて、あちら側の人間だ。

どこでどう情報が漏れるかなんて分からない。










"―――いいか。奴等に絶対に隙を見せるな、付け込ませるような真似はするな"


今日の私は、いつも以上に"結城"を背負ってこの場に居る。

あそこで綺麗な笑みを浮かべる女性も、そこで完璧に口角を上げる男性も。

全てが敵。味方なんていない。




「(しっかりしろ、私は、結城香弥だ)」






誰もが羨む巨大企業の令嬢。

そんな立ち位置であることは生まれながらに頭に叩き込まれてきた。

向けられる羨望と嫉妬の入り混じった沢山の視線、視線、視線。












今日の為にオーダーされた上品な濃紺のワンピースを揺らしながら、掛けられる声に完璧な笑みを返していく。

妥協なんてしていられない。


―――…一見華やかに視界に映る大規模なパーティ会場は、どす黒い感情ばかりが渦巻く逃げ場の無い檻のようだと感じた。そう、まるで四面楚歌。