「新井さんには、読書をお勧めするよ。進学先も決まって時間に余裕もあることだから」


「どうして? 図書委員だから?」


「そうだね。せっかくなんだから、本に囲まれている状況を活かしたらどうかな。活字に触れると、物語を楽しむだけじゃない、知らない言葉を知り、洞察力が鍛えられ、人の心がわかるようになる」


「へー。本ってすごい」


「僕がお薦めするのは――ひとまずこれと、これとこれかな」


そう言って渡されたのは、三冊の小説だった。


「今度読んでみるね」


「是非とも」




友坂くんご推薦の本を開いたのは、それから一週間くらいあとのことだったと思う。


一冊目のページを開き、珍しく友坂くんの来ない図書室で、わたしは窓際の席に着いていた。


「――」


難しい言い回しがあまりないものを選んでくれたんだとわかり、悔しいけど助かると読み進めた。