「好きやで。」



気持ちを伝えるのって、こんなに緊張するものだっただろうか。
大きな会議より、よっぽど緊張したかもしれない。

たった2文字の想いを口にするのに、もう大人である俺が何故か唇を震わせた。



『………恭ちゃん、』

「……ん」



そのやさしい声が耳朶をくすぐって全身に染み渡る。
枯渇した地面が潤っていくように。



『わたしも、好き。すごく。』

「、」



心の奥底に眠る気持ちは留まることを知らない。
むしろ増え続け溢れるばかりだ。



『待ってる、ね』

「……うん」

『お仕事、頑張ってね』

「……ありがとお」



はるが書類を届けてくれた、その帰り際に感じた微かな不安。

嘘みたいに晴れやかになる。
あたたかなそれはまるで、春のひだまりに包まれているみたいだ。