未だ眠り続けるはるを見る。

途端に顔がゆるゆるとだらしなくなるのがわかった。


――自分のこんな顔。
確認する術はないが、絶対に知りたくない。
彼女が知ってくれていれば、それでいい。

心が、身体が、あまく満たされるのだ。



「どんな夢、見とんのやろな」



すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てる彼女の夢の中で、自身が必要とされていることを小さく願った。


そして離れるのを惜しむかのように深い溜息を吐いてゆっくりと立ち上がり、彼女の部屋にいつの日か持ち込んだ服を取り出した。

もうよれてしまったグレーのトレーナーが綺麗に畳まれている。
柔軟剤の香りの中に、彼女の小さな優しさを見つけた。

そういう些細な幸せを感じながら音を立てないように、静かに。
起こさないように、そっと袖を通す。



「さて、」



美味しい朝ご飯でも作ってやるか。
はるが起きてきたときに喜ぶやろーからな。



彼女の眠気眼や驚いた顔、鼻から抜けるようなとろんとした声、とびきりの笑顔。

想像しながらキッチンへ向かった。
その足取りは軽く。