「俺は結構前から桜子に惚れてるから。だから、…見られてると死にそうになる」





ゴソゴソとポケットを泳がせた手のひらが、探し当てたタバコの箱。

今まで何度か一緒に飲んだりしていたから、タツ兄さんがどんな種類の煙草を好んでいるのかも覚えてしまった。



クールダウンするようにタツ兄さんが煙草を吹かせている間、先ほどの言葉が脳内をぐるぐると占拠する。






『結構前から惚れてる』──まさかそんなはずはない、と思っていた。





信じたくないわけじゃなくて、ただ単に信じ難くて。
だって、私はタツ兄さんよりも一回りもガキだし、恋愛のイロハも知らないし、それに。