「ど、して」


泣き顔を、初めて見た。

その表情はひどく哀しい。だけど瞳に浮かぶ透明な雫は、相反してとても綺麗だと思った。



「わ、たし……」



消え入る心許無い音。小さく震える身体に手を伸ばせば、ぴくりと更に震える。


堪らなくて、ぐっと抱き寄せれば。

反動で堕ちる一粒が勿体無いとさえ感じた。












「この細ェ小せェ身体に、」



背中に添えられた武骨な手が、私の存在を確かめるように上下する。

その緩やかな手付きに大丈夫だ、と言われているようだった。



「お前はどんだけでけェ荷物抱えてる?」



普段は突き放されているかと思う程に低くて冷たい声色が、今は優しく届く。

切れ長の藍色の瞳が、何故だか温かいとさえ思ってしまう。



「お前のその荷物、俺に全部預けろ。」



放たれた強い願いと、私を丸ごと包み込んでしまう大きな存在に。

回した手が、離れないことを未来に夢見た。





**掠れた声で懇願するは、
(どうかこれが、偽りでありませんように。)




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空想アリア
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