先生の特別になりたい。





自習室に入ると、カバンから数学のノートと問題集を取り出し、職員室に向かった。



先生、いるかなぁ……


職員室前でドアのガラスから中を覗いてると、後ろからパコっと何かで叩かれた。



「いっ…たぁ…。
え、あ、先生?」


そこに居たのは、くるっと丸めたカレンダーを片手に持つ立花先生だった。



「なにやってんの?不審者みたいに。」




あたしの心臓がキュッとはりつめた。



「だ、誰が不審者ですか!
先生を探してたんです!」


先生はわざとらしくため息をつく。



「なーんだよ、遊びに行かねーの?」


そう言うと、帰り際の沙耶たちの方を見た。



え…?

あたしが首を傾げる。


「あいつらに誘われてたじゃん。」



な、なんで知ってるの!


「…今日は勉強の日なんです。
先生、ストーカーだったんですか。」




「こっちのセリフだ。
もう、毎日毎日呼び出しやがってー」



どこか満更でもない先生が近くのイスを引いて面倒くさそうに座る。


あたしもそれに続いてイスに座った。



…先生の隣に。




「私はストーカーじゃありません。
ただの真面目な生徒ですから。」



そう言ってノートを開く。



「いやただのストーカーだね。真面目じゃねーだろー。
質問と呼び出しては、半分くらい余計な話してんだろ。」



笑いながら言う先生は楽しげだった。


「それは完全に先生のせいでしょ!
私はちゃんと質問してるのに、先生がどんどん話ずらしてくる…」



実は、それが目的だったりする。


先生は頭の後ろに腕を組み、ぐーっと伸びをした。





「…だったら、今日から俺、真面目に質問受けるわ。余計な話しないー。」




…え。

とっさに先生の顔を見上げると、面白そうにニヤついた大人気ない顔があった。




「…先生がそんなことできるわけないです。」



あたしが強気で言い返すと、先生はふっと笑った。



「完全にバカにしてんだろ。俺の事なんだと思ってんだ、まったく。」



そう腕組みしてあたしのノートをのぞいた。