足の肌に当たる、冷たい風が痛い。
もうすっかり冷え切っていて、心まで凍りそうだった。
人が一人もいない。あるのは、ホームの電子版の明かりと、自販機の明かりくらいだった。
地面に次々と涙が落ち、その跡が広がっていく。
あたしは、手に持っていたちょっぴりしわくちゃになった、桜色のお守りを握りしめた。
「…先生…」
本当は、素直になりたかった。
先生の元にいたかった。
例え、叶わなかったとしても、先生の近くにいたかった。
どうして、あたしは……
こんなに不器用なんだろう。こんなに、弱いんだろう。
自分が嫌いになっていく。
そんな自分もいやだ。
夜、19時半。下校時間を過ぎて残っていたあたしは、生徒指導の先生に催促され、学校を出た。
あと、卒業まで10日。
運命の人だと思ってた。ずっと、一緒にいたいって思ったんだ。
…けど、このまま卒業して、バラバラになって…もう会えなくなる。
もう一生、会えなくなるかもしれない。
”先生、ごめんなさい。ありがとう。”
せめてそれだけは伝えたいのに。
ふと見上げた空は、真っ暗で、けどひとつの星が輝いていた。
まるで、自分を見てって言ってるみたいに。
…あたしは、いったいどこで間違えたんだろう。