(これって“恋”ってことなの? だとしたら私、ジーク様に……)

そのとき、ふとソフィアに言われたことを思い出す。

――勘違いしないで。ジークは国王なのよ? 身の程を知りなさい。

今でも胸に突き刺さっているその言葉に、現実を突きつけられ水を浴びせられたようになる。

(ああ。国王様に恋をするなんて、いけないことなのに)

頭の中ではわかっていても高ぶってしまった気持ちを制御することはできない。しかし、それを言葉にして伝えることは罪だった。自分は庶民で彼は一国の尊い王なのだから。住む世界だって雲泥の差だ。

今まで抱いたことのない感情に戸惑いを隠せない。本当に、自分はどうかしている。“アンナ”と名前を呼ばれただけでどれほど彼に捕らわれているかを思い知らされる。それと同時にどんなに焦がれても無駄なことだと痛感せずにはいられなかった。

「私はお前のために勉強を教えると言ったが……それ以外にも教えてやらなければならないことがたくさんありそうだな。それに私は先日、お前から愛でることの許しを得たばかりだ」

「え?」

「お前も“よろしくお願いします”と言っていただろう? まさか、忘れたなんて言わないだろうな?」

そう言いながらジークの唇が頬を掠めた。こそばゆくて、触れられた部分だけが熱を帯びる。