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「瀬川ー、桜庭呼んでる」
いつも通りに、ドアの近くの席の三好くんが私を呼ぶ。
その向こうにいる桜庭くんは、いつもの桜庭くんだ。
昨日、海で話したことなど……私の夢だったんじゃないかと思うほど、いつもと変わらない桜庭くん。
廊下に出て、桜庭くんに促されるまま、あまり人の来ない階段の辺りまで歩く。
「昨日はありがとう。ごめんね、泣き言言って」
「……ううん。大丈夫」
大丈夫って……。私もっと何か言えることあるんじゃないの? と思ったけれど、内容が内容だっただけに簡単な励ましなんて言えなくて、足元に視線を落とそうとして走った鈍い痛みに左肩を押さえた。
「首痛いの?」
そんな私に気づいた桜庭くんが私の顔を覗き込んでくる。

