思わず「え?」と声を漏らした私に、桜庭くんは笑って、軽く繋いでいた手を、指を絡めて繋ぎなおしてきた。

「まぁ、最近は俺の事見てくれてるけど」

「……そ、そう?」

「手ぇ振るといっつも振り返してくれんじゃん。夏休み明けてから今んとこ、空振り無し」

 桜庭くんの笑う声が、少し嬉しそうに聞こえて、私の頬は一気に熱くなる。

「桜庭くん、目立つんだもん。桜庭くんこそ、よく私の事見つけられるよね」

「判るよ。なんとなく。とわ、なんか電波出してんじゃない?」

「……出してないよ」

 絡めて繋いだ手の指先を触れ合わせて、桜庭くんはクスクスと笑う。

「俺、とわの真っ直ぐで融通効かないとこ好きだよ」

「……それ、褒めてる?」

 褒めてないと思うんだけど? と零した私に、「褒めてるよ」と桜庭くんは笑う。

「俺、とわに俺だけ見てて欲しい。それなのに、友香のこと誤魔化して付き合おうって言っても、そりゃ無理だよね。
 終わりにするよ。ちゃんと終わりにする。もう無理。限界。片付けたら真っ先にとわの所に行くから。だから……待ってて」

 私は、言葉が出てこなかった。

 今、何を言っても、この空気に流されただけに聞こえてしまいそうな気がして。

 言葉にしないと伝わらないのは分かっているけれど、私は繋いでいる桜庭くんの手を握り返した。