「……先週、教室で話してたし」
「それは、前みたいに、逃げなくても平気に……なったから」
「……つまり武田が、フリーになったから?」
武田と若菜が別れた事、桜庭くんはもう知っているんだ。そこに少しびっくりした。
「……そういう訳じゃ、ないと思う、けど」
「まだ好き? あいつの事」
前と変わらずに武田の事を好き……ではないと思う。だけど、少し前まで好きだったから、その感傷がまだ残っていて、時々、ちょっとした事でも嬉しかったり、痛かったりする。でも、それは……夏休み前とは全然比べ物にならなくて、何となく過去になったんだと、感じていた。
好きかと言われたら、嫌いじゃないから好きなのかもしれないけれど、この”好き”は、桜庭くんの言う”好き”とは違う気もする。
「んー……友達として、好き」
私の答えに、桜庭くんは「それ、1番微妙なヤツ」とぼやく。

