「……ごめんね。先週……私……」

　先週、私が桜庭くんとちゃんと話をしなかったのは、私の単なる子供じみたの八つ当たりの様なものだったのに。

「俺、深く考えないで引き受けたんだよね、兄貴の代わり。サッカー楽しかったから女子に興味全然無かったし。彼女いるって事にしたら告られなくなるし、特にデメリット無いかなって。
　でも、受験の頃からかなぁ。友香 だんだんあんな感じに面倒くさくなってきてさ、楽じゃないし、楽しくもないし、なんか……すげー虚しいし。
　いつまで友香の前で兄貴のフリしてたらいいのかも、いつになったら友香に兄貴死んだって言うのかも、聞いても、みんな、話 逸らすからさ」

　桜庭くんの声には、苛立ちと寂しさが入り交じっている。

「だから、俺の事好きって言う子と付き合ってみたら楽しいのかなって試してみたんだよね。 そしたらさ、部活あって会えないだけでも、すぐに好きじゃないなら別れるとか、部活とどっちが大事なのとか言われるし。そんなん部活に決まってんじゃん。
　しかも、友香と並行しないといけないから、 時間なんて全然無くてさ。友香からのメッセージ、勝手に見て浮気だってなんだってすぐ騒がれて、即別れ話なんのね。だからって、兄貴の事 話す程の相手にも思えないし、別れるって言われても、はい、そーですか って感じで。
　そうこうしてたら、千紗までいちいち口出ししてくるようになってさ。しかも、俺付き合った人って大抵俺と別れてすぐ新しい男作ってんのに、俺ばっか遊んでるみたいに言われてるし。ねぇ、なんで？」