「誰も、なんも言えなくてさ。みんな黙ってたら『さっき、お母さんが満が死んじゃったなんて言うからびっくりしちゃった。満と湊、聞き間違っちゃったんだね』って。
 一時的な物だろうって、医者は言ってたんだけど……。だけど、訂正してもパニックになって悪化するかもっても言われてさ」

 その先は、言われる前に察しが着いた。

「……だから、俺は三年前に死んでんの。あいつ、俺の事 湊って呼ばない。ずっと、兄貴の名前で呼ぶ。千紗もだよ。友香の前では、俺の事 名前で呼ばない。
 友香は、俺を束縛しようとするけど、俺の事は……全然見てないよ」

 そんな状況は想像もつかなくて、返す言葉が見つけられなかった。

「2回やんの。親戚との兄貴の法事と、友香の家と千紗の家しか来ない、俺の偽物の法事と。
 去年、俺のやらずに済まそうとしたら、友香の奴 うちの親に『やらないなんて、湊が可哀想』とか言いやがってさ。 んなもん、やる方が可哀想だっての。
 昨日一日中 満やりながら、先週のまま、とわに避けられるなら、満でも湊でも大して変わんねーんじゃね? って思ったら……すげー虚しくて……。とわに、会いたかったんだよね」