「……なに?」

 私は教室に来てくれた桜庭くんの肩のあたりに視線を向ける。

 友香さんのことが、じくじくと胸に刺さっていて、ここ数日、桜庭くんの目をちゃんと見ることも出来ていない。

「とわ、コミュのノート貸して?」

「返しに来てくれないから貸さない」

「返しに来るから」

 駄々っ子のような私に、桜庭くんが困ってるのは、顔を見なくたって声で分かっているのに。

「ねぇ、とわ……」

「瀬川、次 化学室。遅刻するぞ」

 会話が続かない私と桜庭くんの間に、武田が容赦なく入ってくる。

 桜庭くんの体温を心地良く背中に感じた月曜日から、急降下して、1週間が終わった。