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「おはよう、瀬川」

「おは……よう。早いね」

 朝、駅のホームで電車を待っていたら、武田に声をかけられた。

 私が混んでいるのが苦手で早めの時間に学校に行くので、今まで、朝は一緒になったことが無かったのに。

「早く起きたから何となく。瀬川はいつもこの時間?」

「うん、大体この時間」

 武田は「そっか」と短く返す。それから、以前と変わらない、他愛のない会話が始まる。

 夏休みに久しぶりに会った中学の友達の話や、学校の話。夏休み前には、あんなに話せなかったのが信じられない程、自然に話していた。

 授業の合間も、若菜と話していると武田も混ざってくる。

 きっと2人が付き合っていたとしてもこんなふうに話せたはずなのに、私が気を使いすぎてしまっていたのかもしれない。

 だけど、それに反比例して、桜庭くんと気まずくなっていた。