帰りに会えないと授業の合間に少ししか会えないから。電話はしていても、やっぱり会って話したいと思っていた。
そういえば、最近はよく電話をくれる。夏休み中は時々だったけれど、最近は毎晩だ。
「とわの字 楽しそう」
「え?」
「なんかいい事あった? 後で教えてね」
文化祭が近いから部活に来ていた羽純が、そう言って手を振って帰っていった。
それにしても、字で察するなんて……さすが書道仲間だ。
サッカー部のミーティングは当たり前だけれど普段の部活より早く終わったようで、桜庭くんが書道室に来た時には、まだ他の部員が数人残っていた。
夏休み前に東海林先輩の1件があったせいか、桜庭くんの登場に一瞬ザワついたけれど、桜庭くん本人は、そんなのを全く気にしないで私の所にやってくる。
「お疲れ様。早かったね」
「ミーティングにしちゃ長かったよ」
私の隣に座って、桜庭くんは苦笑いをして「キリのいいとこまで書いていいよ」と私に言うと、スマホに視線を落とした。

