「……そういうのは、私を巻き込まないでやって欲しいんだけど」

「巻き込んでるから効果あるんだけどね? 今週、うちのクラスの桜庭シンパざわざわしてるもん。夏休み前に他の女の乱入まであったのに、夏休み後も続いてるから、今までと違うんじゃないかって」

「……怖いよ、そういうの……」

 羽純は、「全くだよねー」と苦笑いする。羽純は、彼女達が怖いから私と仲がいい事をクラスで言わないことにしているのだという。

「はずみん 時間大丈夫?」

「そろそろ行かなきゃ。とわは?」

「一緒に帰っていい?」

「桜庭くん待たないの?」

「来週の大会終わるまでは、活動時間延長してるんだって。だから、終わるの遅いから先に帰ってねって。むしろ暗くなる前に早く帰りなさいって言われた」

「そーゆーの、過保護っていうんだよ。素直に聞いてる とわも とわだけど」

 自転車を取りに行った羽純を待ちながら、練習をしているサッカー部を眺める。桜庭くんは背が高いのもあって見つけやすくて、見つめていると手を振ってくれたので、振り返した。

「あれ、桜庭くん?」

「うん」

「君たち、完全に両想いだよね。私、この距離でアレが桜庭くんだという確信持てないんだけど。どこで見分けてんのさ」

 その逆も然り。と羽純はニヤリと笑った。

 両想い。

 その単語に胸も頬も熱くなるけれど、私の胸の中には、トモカさんの事が、ずっと棘のように刺さっていた。