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桜庭くんは、毎日メッセージをくれる。そして週末や時間が合う時には電話がくる。
合宿に大会、私の祖父母宅への帰省など、いろいろ用事は続いて、結局夏休みに桜庭くんと会うことは無かった。
だけど、 毎日続いたメッセージや、時々かかってくる電話、甘くて優しい言葉と声に私の心はすっかり絆されて、夏休みが明けた。
桜庭くんは相変わらず毎日私のノートを借りに来る。そして、「返してね?」と言えば二つ返事で「判ってるよ」と言いながら、さっぱり返しに来てくれない。
「ねぇ、はずみん。何回言ったら返しに来てもらえると思う?」
「何回言ったらっていうか…… それ、わざと返しに行ってないと思うよ?」
「……なんでそう思うの?」
「いやー……、あの騒々しい桜庭ファンの動向を桜庭くん本人が知らないって事は無いと思うんだよね。特に、とわに関することは」
「どういう意味?」
「とわの事、彼女たちが色々言ってるの、桜庭くんは知ってると思う。だから、その牽制。あのトモカの件はあったけど、とわとの関係は変わらないよって」
……やだ。なにそれ。と私はげっそりしてしまう。

